その一
帰ってきた。
甲板に立った私は、目の前の光景に目を細めた。
船が島の西側にある那覇泊(なはとまり)に入港したのは夕暮れ時。
港から望まれる家々の淡い色の赤瓦(あかがわら)が入り日に照らされて、夢のように美しい。木々の滴(したた)る濃い緑に、魂が吸い寄せられるようだ。
帰ってきた。
もう一度安堵(あんど)の息とともに呟(つぶや)いたあと、私は我に返って苦笑した。
私が最初にこの島々--琉球(りゅうきゅう)を訪れたのは、昨年の五月二十六日。わずか一年余り前の話だ。その後、この地を離れ、船であちこち回っていたので、滞在していたのはたかだか四か月ほどにすぎない。
帰ってきた、という表現は、どう考えても的外れだ。
しかし、と私は唇の端に苦笑を浮かべたまま、小首をかしげた。
それにもかかわらず、目の前の景色がわたしの心に呼び覚ますのはやはり「帰ってきた」という感慨(かんがい)だった。なぜそんなことになるのか? 思案する私の視界を、大きな影が遮(さえぎ)った。
ふりあおぐと、ペリー提督がすぐ近くに立っていた。
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