あるひとつの旋律がとても印象深いため、聴き終わってもずっと頭の奥に居座り、口ずさんでしまうことがある。シューベルトの「幻想曲(4手ピアノのための)へ短調」の冒頭の旋律がまさにそれである。フランスのベルトラン・シャマユとノルウェーのレイフ・オヴェ・アンスネスという実力派ピアニストは、同じ恩師の元で学び、音楽祭でも共演している。
そんなふたりがシューベルトの「4手のための作品集」を録音した。ここでは曲によって低音部と高音部の担当をかえ、ひとつの声になるような緊密で温かく親密的なデュオを聴かせている。ライナーノーツによると、ふだんはソロを演奏しているため、1台のピアノをふたりで担当するのはかなり困難を極めたようだが、録音からはそんな苦労の痕跡は微塵(みじん)も感じられない。
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