その五
荷物を持って一緒に一日橋(いちにちばし)まで来てもらいたい--。
と言うと、上原君はたちまち、それまでとは別人のような難しい顔になって、何のかんのと言い訳をはじめた。
まだ仕事が残っていたのだった。
明日休みだと思ったら、朝早くから大事な仕事が入っていた。
といった言い訳は、しかし所長のおれの一存で何とでもなると気づくと、今度は、急に頭が痛くなってきた、腹が痛い、足が痛い、腰が痛い、目眩(めまい)がする、などと大袈裟(おおげさ)に訴え出した。
あまりにわざとらしいので、近くにいた他の事務員から、
「あれー、さっきまであんなにぴんぴんしていたさぁ」
と笑われて、さすがに恥ずかしくなったようだ。
「それじゃシャチョーさん。そろそろ出掛けましょうかね」
上原君は、顔をかくすようにツバ広の帽子を目深(まぶか)にかぶり、率先して事務所を出ていった。
事務所裏の備品倉庫で必要なものをかき集め、上原君に半分持ってもらって、いよいよ魔物(マジムン)退治に出発だ。
一日橋に到着したのは、暑く、長かった沖縄の夏の一日もようやく終わろうとする日暮れ時。西の空が茜(あかね)色に染まり、東の空に星が一つ、また一つと輝きはじめた頃だった。
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