「8月ジャーナリズム」という業界用語がある。広島・長崎の原爆忌や終戦記念日のある8月は、戦争をテーマとした特集や記事が数多く報じられるという意味合いだ。戦争から何を学ぶか、いかにして戦争をしない道筋を探るのかは、ジャーナリズムの中心テーマであり続けている(と少なくとも僕は思っている)。
本稿を書いている8月中旬までにもいくつかの報道に接した。高市早苗政権が、戦争のできる国へと国家を強引に造り変えようとしているなか、報道に携わる人々がどこまで覚悟をもって踏んばれるかがいま問われている。
ETV特集が秀逸
そうした折、僕は、NHKの仕事ぶりがやはり卓越しているなとの印象を持つのだ。NHKの人材と資金の安定ぶりは、新聞社や民間放送の比ではない。戦争をテーマとした「8月ジャーナリズム」には、やはりきちんと人とお金を費やしてほしいと思う。公共放送の役割として最も大事な部分だからだ。「映像の世紀 バタフライエフェクト」は言うに及ばず、近々目にしたなかではETV特集「“切り捨てられた”被爆者 在韓被爆者の81年」(8日放送)が突出して優れていると僕は思った。
NHKの取材班は、平岡敬元広島市長(98)のロングインタビューから貴重な事実を掘り起こしていた。在韓被爆者を被爆者援護法の医療費支給対象から排除しようと動いていた当時の厚生省の「局長通達」(1974年)の存在を明るみにしたほか、韓国政府内部の未公開文書を発掘、韓国の諜報(ちょうほう)機関が介入して問題解決が遠ざけられていた事実まで掘り起こしていた。
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