「パレスチナ36」
東京・日比谷を中心に開催された第38回東京国際映画祭は、パレスチナ問題や気候変動など、世界に目を向け他者への理解を深める映画祭になりました。10月27日から10日間にわたった映画祭は、のべ6万9千人の観客を動員しました。
北野ひろみ記者
コンペティション部門の最高賞・東京グランプリは、パレスチナのアンマリー・ジャシル監督の「パレスチナ36」が選ばれました。1936年、英国委任統治下のパレスチナが舞台。ユダヤ人入植者や英国の植民地支配に抗し、パレスチナで暮らすアラブ人の農民らが蜂起した史実をもとに描きます。
映画は精巧に再現された美しい農村風景と、横暴勝手な英国軍や、パレスチナの地に民族的拠点をつくろうとするユダヤ人入植者たちの対比が印象的。さらに混乱の中でも将来に夢を見るアラブ人青年や、弾圧に静かにあらがう牧師の父子など、重層的に描かれる人々の視点が、現在のパレスチナで、イスラエルによるジェノサイドのもとで生きる人々を思い起こさずにはいられません。
ジャシル監督は観客とのQ&Aで他のアラブを描いた作品との違いを問われ、「1936年は私たちの国の歴史で重要な転換点。私たち(パレスチナ側)の視点で描きたかった」と語りました。
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