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日曜版  |  記事

「無言館」のうた 文 窪島誠一郎
第38回 徳山駅新幹線ホーム
久保克彦「(煙草を銜(くわ)える)自画像」

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山口県光市から十数キロ、同県熊毛郡平生町の小島に生まれた画学生久保克彦の最高傑作といえば、何といっても在学していた東京美術学校(現・東京芸術大学)に買い上げられ、現在、東京芸大大学美術館に収蔵されている卒業制作「図案対象」だろう。これは久保が一九四二(昭和十七)年に同校を卒業するとき、美校側から作品を買い上げたいという申し出があり、今や館の重要コレクションとなっている大作の油彩画である。
 この絵は、久保が出征した昭和十七年前後の「世界」が置かれていた戦争という時代の「実相」を、きわめてリアルな一大パノラマに仕上げた作品で、そのド迫力かつ半端じゃない恐怖感をあたえる画面は、戦後八十年にわたって人々の心を惹(ひ)きつけてやまないのである。

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