北アルプスを望む安曇野の長峰山で(撮影・片桐資喜)
さて、正月である。
謹賀新年
亀は万年
めでたやな
これがここ数年のぼくの新年の挨拶である。どこかずれているが、ちゃんと韻は踏んでいる。
挨拶と言っても年賀状ではなくメールにちょっと書くくらい。年末に何十枚も賀状を認(したた)める習慣はとっくの昔に失った。歳月と共に失った習慣は少なくない。
中学校の頃、木版で年賀状を作った。文案を考え、版面の原稿を作り、半透明の紙に写して裏返し、版木にカーボン紙で転写する。それを彫刻刀で版に仕立てる。
あけまして
おめでとう
ございます
と書くのは簡単だが、ひらがなの曲線をきれいに彫るのはなかなかむずかしい。画数が多くても漢字の方がさまになる。
版ができるとインクと葉書を用意して刷りに入る。版にインクを乗せ、紙をそっと置いて、竹の皮でできたバレンでこする。炬燵(こたつ)の周りいっぱいに何十枚もの賀状を広げて乾くのを待つ。
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