「処罰するのは、一人だけか?」
ペリー提督が書類に目を落としたまま、低い声で琉球府の役人に尋ねた。
「この書類には“後を追う者たちはボアード水兵の背後から石を投げた”とある。石を投げたのは、連れてこられたこの者だけではないはずだ」
「おっしゃること、まことにごもっとも。さすが提督でございます」
役人は頭を下げて言った。
「取り調べの結果、その場に居合わせた六名の者が“ボアード”に石を投げたことが判明しました。ただし、実際に当たったのはこの者が投げた石だけで、あとの五名が投げた石は“ボアード”には当たっていません--事件を目撃した者たちの一致した証言です。石を投げた残る五人については、やはりこの島の法に基づいて、全員を宮古島への流刑八年に処する所存です。なお、以下は折り入って相談なのですが……」
「冗談じゃない!」
ベッテルハイム牧師が、こらえ切れなくなったようすで大声を上げた。
「さっきから黙って聞いていれば、何様のつもりだ? この島の法だと! 相談だと? 殺されたのはアメリカ人だ、キリスト教徒だ。この島の法など、いったい何の関係がある? 異教徒がキリスト教徒を殺すなど言語道断。神への冒瀆(ぼうとく)だ。相談もクソもあるものか。目には目を、歯には歯を。それが神の法……」
「黙れ!」
ペリー提督の一喝に、当のベッテルハイムのみならず、部屋にいる全員が震えあがった。
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