首をすくめて振り返ると、ペリー提督が机の上に熊のように大きな手を置いていた。
お得意の“机への一撃”だ。
ペリー提督は机に叩(たた)きつけた手の平をそのまま、部屋の者たちをじろりと見まわした。
「ここは琉球だ」
威(おど)しつけるような低い声が、静まり返った部屋に響いた。
「処分は、この島の法に委ねよう。公正な裁きが行われたと信じている」
琉球府の役人たちのあいだで、張り詰めていた空気がゆるむのがわかった。どうやら犯人として連れてこられた若者自身を含め、審理に参加した琉球側の全員が、被疑者の身柄の引き渡しや、最悪はその場で処刑されることも覚悟していたらしい。
「今回の処分については、島の責任者の名前で“七月八日付”の書面にして頂きたい。本国に戻ったら、事件の報告書を提出しなければならないのでね」
ペリーはいくつか細かい要求を口にしたあと、言葉の調子を変え、
「婦女暴行は、アメリカ本国でも重い罪である。ボアード水兵が生きていたら厳しく処罰するところだが、当人死亡ゆえ処分なしで了解頂きたい」
と琉球府の役人たちに向かって言った。
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