絵・井桁裕子
イタリアでは、こぞってカンツォーネが歌われる。まさに、歌の国だ。すばらしいメロディの宝庫である。
「サンタ・ルチア」や「オ・ソレ・ミオ」「帰れソレントへ」などは広く知られているが、長く歌いつがれてきたそれらの名歌だけでなく、毎年生まれる新しいカンツォーネも、実にすてきだ。毎年の「サンレモ音楽祭」がその源泉である。
カンツォーネが好きなことにかけては、僕も人後に落ちないが、これには明確なきっかけがある。
話は高校時代にさかのぼる。部活で合唱をやっていたが、そこに関場武さんという2学年上の先輩がいた。テノールだった。この関場さんがカンツォーネ好きで、当時斯界(しかい)で大人気だった名歌手ジュゼッペ・ディ・ステファーノをもじって「ジュゼッペ・ディ・セキバーノ」と自称していた。
で、毎日の放課後、下級生の僕にピアノ伴奏をさせ、歌いまくるのである。ほとんど初見で弾く僕も、次第にカンツォーネにはまっていった。
セキバーノ氏にはその後会う機会がなかったが、慶応義塾大学文学部教授として辞書学の権威だった(昨年83歳で逝去された由)。イタリア語の教師ではなかったのだ。
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