風媒社・1980円
今年は茨木のり子の生誕百年に当たり、さまざまな回顧がなされている。なかでも本書は、茨木の少女時代から戦後に詩人として出発するまでの前半生を描いた貴重なルポルタージュだ。
その年代記を著者は独自な方法、構成で描く。後年、茨木が発表した詩10篇とエッセイを軸にしつつ、埋もれた資料を多数発掘して、少女が辿(たど)った精神形成の過程を詳(つまび)らかにしていく。
両親の滋味深い愛に包まれ、自由闊達(かったつ)な日々を送っていた少女は宝塚歌劇に熱中するなど、豊かな文化に触れながら繊細な感受性を育てていった。学業優秀で教師や生徒の信頼も厚かった。
だがその背景には1937年、11歳のときの盧溝橋事件、日本の中国大陸侵略拡大、最愛の母の死という不幸があった。そうした激動の時代でも心が折れなかったのは茨木のまれに見る芯の強さによるものだった。
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