柳田先生は質問者に対して、まず、
「日本人の祖先が北から次第に南に下ったのか、はたまた反対に南から帰るツバメの路(みち)を追うてきたものか」
と、お得意の文学的な修辞をもって論点を整理し、その上で、
「私が見るところ、沖縄及び先島諸島の生活習慣、言葉、信仰などは、いずれも“物のはじまりの形”に近く、“世のおわりの姿”とはどうしても思われない。こんにちの沖縄や先島諸島に見られる生活が、小さな島に渡ってすぼんだからこのようになったと見るよりは、むしろわれわれ本土の生活の方が小さな島から大きな島にわたった結果、このような状態になったと見る方が、はるかに説明しやすいだろうと思われるのです」
と、自信たっぷりな口調で答えた。
時間の関係もあって、それ以上は質問も出ず、柳田先生特別記念講演は万雷(ばんらい)の拍手をもって無事終了した--。
とばかり思っていたので、事務局がかくのごとき気まずい雰囲気になっていようとは、正直、予想外の展開だった。
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