韓国小説『黒い海 強制徴用者の涙』の邦訳が出版されました。日本の植民地下にあった朝鮮から、15歳で長生炭鉱(山口県宇部市)に連行された少年の物語。訳者の北村幸子(さちこ)さんに思いを聞きました。
本吉真希記者
『黒い海』は、日本に国を奪われ、ツツジの花びらで飢えをしのぐ主人公カンジェと、年上のチョンソクのやりとりから始まります。カンジェのモデルとなったのは、海底にある長生炭鉱で起きた水没事故(1942年)の生存者、金景鳳(キム・ギョンボン)さん(2017年死去)です。韓国の作家・文栄淑(ムン・ヨンスク)さんが金さんに取材を重ね、10年に出版しました。
朝鮮人をだまして日本に連行する様子や、強制収容所のような宿舎、死と隣り合わせの労働現場…。描かれているのは、差別に満ちた日本人の暴力と、尊厳をかけた朝鮮人の抵抗です。
北村さんが強く印象に残ったのは、逃亡に失敗したカンジェらが日本人監督に激しくむちで打たれ、1人が息絶える場面です。遺体を「海にすてろ!」と怒鳴る監督に、死を覚悟したカンジェはむちで打たれるほどに怒りを爆発させ訴えます。「朝鮮人は奴隷じゃない!」「なんで人としてあつかわないんですか?おれたちは獣じゃない!」
「この場面は訳しながら『よくぞ言った』と気持ちをぶつけるカンジェを応援していた。金景鳳さんと作家の思いを感じながら訳していました」
一覧へ戻る