父・永井潔の描いた祖母の肖像画の前で=撮影・石塚康之
劇作家・演出家の永井愛さんが、祖母の青春時代をモデルにした代表作「見よ、飛行機の高く飛べるを」を、来年1月の二兎社公演で初演出します。「国の政治によって個人の自由が脅かされる明治末の状況がいまと重なる」と語る永井さんに、思いを聞きました。
北村隆志記者
「見よ、飛行機の高く飛べるを」は1997年、青年座のために書き下ろし、「ら抜きの殺意」とともに、芸術選奨文部大臣新人賞を受賞しました。
「私の戯曲はこの二つの上演回数が一番多いんです。大学でもよく演じられています」
進む軍国主義化
作品の舞台は1911年。大逆事件の死刑が執行され、平塚らいてうらの『青鞜』がうまれた年です。地方の小さな学校にも、軍国主義化の時代の波と、女性の目覚めの動きが影響してきます。
「作品の時代背景に、不思議なくらい今の時代が似てきた気がします。この作品を自分で演出したことはなかったのですが、ぜひ現代に響く形で上演したいと思いました」
執筆のきっかけは、当時105歳で元気だった祖母の夜中の歌でした。
「ベッドに寝ながら大声で歌うんです。それが変な歌なんです」
永井さんはよどみなく歌いはじめました。「♪リ、リ、李鴻章(こうしょう)の鼻ぺちゃ、チャ、チャ、ちゃんちゃん坊主の首とって、テ、テ、帝国万歳大勝利…」。日清戦争の時の手まり唄です。李鴻章は清の高官でした。
「おばあちゃんは日清戦争の時に子どもで、こんな歌を歌っていたのかと。日清・日露・第1次大戦、第2次大戦と、壮大な歴史を生きてきていたんですね。個人の意識の中に歴史が眠っていました。それまで家族のことを書くのは私的でよくないと思っていましたが、祖母のことは私が書くべき題材じゃないかと思ったのです」
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