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日曜版  |  記事

「無言館」のうた 文 窪島誠一郎
第44回 「風になっていない」

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西岡健児郎「妻せつ」
 もうずいぶん前になるが、「千の風になって」という歌がヒットしていた時期があった。米国で生まれた詩を作家の新井満氏が訳詞、作曲された歌で、「亡くなった人は、お墓にはいない。風や光となって、あなたのそばにいるのだから、悲しまないで生きてほしい」というのが歌詞の真意だったが、その歌に対して幼な児が駄々をこねるように、「恋しい人は風になんかになっていない」と新聞のインタビュー記事で答えていた精神科医の女性がいた。
 地元高知県では最大規模といっていい精神科専門の「藤戸病院」(一九六○年開院)の創業者であり、一九七八(昭和五十三)年には同県安芸郡芸西村に「芸西病院」も開設、両院の院長、理事長をつとめながら、生涯現役の精神科医として生きぬかれ、二○二四年四月十八日に百二歳で逝去された藤戸せつさんがその人である。
「たった三ヶ月で新婚生活を断ち切られ、戦争に命を奪われた夫の健児郎さんは、今も私の心のなかに生きつづけている。けっして風なんかになっていない」―初めて「藤戸病院」をお訪ねしたとき、まるで童女のように口をとがらせていた藤戸せつさんのお顔がなつかしい。
◇ ◇ ◇
 現在、「無言館」第二展示館の一隅に飾られている西岡健児郎の「妻せつ」は、そんな若き日のせつさんの横顔を捉えた健児郎の、ある意味では最愛の妻に捧げた恋文のようにも思われる作品だ。

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