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日曜版  |  記事

沖縄変奏曲(13)
南十字星奇譚 1
作 柳広司 題字・絵 オザワミカ

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その一
 夜の空の星の形がちがうことに気づいたのは、島に来てしばらくしてからだ。
 見上げた夜空に、見慣れぬ四つの星が十文字に並んでいた。輝きがやわらかくにじんで見えるのは、海が近いので、水蒸気のせいだろう。
「南十字星。本土では見えない星座だ」
 と教えてくれたのは、おれと入れちがいに東京に戻ることになった後藤(ごとう)さんである。
「まったくなぁ。夜空の星の形までちがうんだから、ずいぶん遠くまで来ちまったものだと思って、最初はおれも心細い気がしたものさ」
 後藤さんは、白いものが交じる不精ひげを手のひらでなでて言った。
「ちがうのは、夜空の星だけじゃないぜ。この島では--。まあ、いいさ。なにごとも自分で経験するのが一番だ。慣れないうちは苦労もあると思うが、ここは良いところだよ。あとは任せた。この島の軽便(けいべん)鉄道をよろしくな。そう……せっかくだ。あの星座のようにしようぜ」
 後藤さんはそう言って空の星を指さすと、よく日に灼(や)けた顔でにこりと笑い、洒落(しゃれ)たパナマ帽を軽くあげて汽船のタラップをあがっていった。
 おれは沖縄に一人残された。
 後藤さんとはそれきり会っていない。

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