鉄軌道(レール)の上を走るのが鉄道だ。何かの拍子に車輪がレールから外れるのを脱線といい、車両転覆につながりかねない完全脱線は、おれたち鉄道屋が最も恐れる事態である。
脱線の原因として多いのは、まず軌道上の障害物である。鉄道屋は、レールの上に石や木の枝が落ちていないか、一番列車を走らせる前に必ず確認する。同じ理由で、雪が降る寒い地方では除雪作業が欠かせない。
障害物による脱線の危険は一般の人たちにもわかりやすい。逆に、わかりづらいのが「温度上昇によるレールの伸び」だろう。
レールは硬い鋼鉄で出来ている。鋼鉄は本来、ちょっとやそっとではびくともしない頑丈な物質だ。近頃は石頭(いしあたま)ならぬ鉄頭(てつあたま)なる造語を耳にするくらいだが、その硬い鉄が温度によって伸びたり縮んだりする。夏の暑さで鋼鉄製のレールが伸びて、レール同士がくっついて押し合いへし合いしたあげく、浮き上がったり、左右にずれることがある。それを知らずに列車が来れば、たちまち脱線事故につながってしまう。
本土では、鉄道を導入した英国の技術屋の助言に基づいて、レールとレールの間に六ミリから七ミリ程度の隙間(すきま)を設けている。暑くなるとレールが伸びるが、この隙間があるのでレール同士が押し合うこともなく、脱線につながる事態にはならない。ただしこれは「気温三十度まで」が前提条件だ。英国や本土ではそれでなんとかなるが、沖縄の夏は暑い。本土ではちょっと考えられないくらいの暑さだ。気温三十度を優に超える日が幾日もある。
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