イラスト・黒須高嶺
「ツバメの巣はどうなるんだ?」。保健室に来た2年生のタケシがつぶやきました。高校統廃合のため、夏には旧校舎が解体されると知った年明けのことです。
私がかつて勤務していた高校には毎年春、たくさんのツバメがやってきて、校舎の軒下に巣を作ります。タケシは、子ツバメの巣立ち前に校舎が取り壊されることを心配していました。
入学した頃のタケシは「人なんて信用できねぇ」という“オーラ”を放ちまくっていました。その頃、建設業の父の仕事が激減し、母のパート収入が一家を支えていました。「働かねぇでゴロゴロしやがって…」と父への強い不満を保健室で時折もらしていました。でも、自分より大変な環境で生きている級友たちとお互いの苦労を分かち合うような年月の中で、タケシのつり上がった目尻は幾分、垂れ下がったようでした。
一覧へ戻る