その四
この数日間、おれは毎朝早くに宿を出て、魔物(マジムン)の目撃証言が多い一日橋(いちにちばし)付近を中心に一人で聞き込み調査を行ってきた。
前年開通したばかりの沖縄軽便鉄道与那原(よなばる)線は、本島東海岸の与那原から順に南風原(はえばる)、国場(こくば)、那覇の四駅九キロ余り。列車ならものの二十五分ほどの距離だが、周辺の聞き込み調査を一人で行うのはなかなか大変な作業である。
本当なら上原君にも手伝ってもらいたかったが、魔物調査は業務外の仕事だ。それに、上原君はしらふのときは良いのだが、酒が入るととたんに口が軽くなる。地元に友人や知り合いが大勢いるので、彼の口(クチ)から妙な具合に魔物の噂(うわさ)が広がっても困る。
沖縄に来てかれこれ三か月。上原君に頼ってばかりはいられない。上原君にいちいち教えてもらわなくても、地元の人の話はたいていわかるはずだ--。
そう思ってはじめた聞き取り調査は、しかし予想していた以上に大変だった。
調査が難航した原因は、言葉の問題以上に、地元の人たちが幽霊や化け物の話をおれにすること自体をいやがったからだ。
--本土(ヤマト)の人は、聞いてもどうせ信じないさぁ。
面と向かってそう言われたこともある。
こうなったら意地だ。おれは根気よく地元の人たちに話を聞いてまわった。最近目撃されたレールを走る魔物だけでなく、軽便鉄道ができる以前にこの辺りに出た幽霊や化け物の話も教えてほしい。そんなふうに頼んでまわった。
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