掘削が完了した空洞部(東京大学宇宙線研究所提供)
どこまでも広がる宇宙。その成り立ちのなぞに山の地下から迫ります。人間をはじめ生物、そして水も空気も地球もあらゆる物質は素粒子でできています。なかでも「ニュートリノ」と呼ばれる素粒子は「幽霊粒子」といわれ、とらえにくい存在。その「幽霊」を観測する施設を建設中の岐阜県の山中を訪ねました。
栗田敏夫記者
地下に巨大な観測装置
同県の北部、飛騨市神岡町。この山中の地下600メートルにニュートリノの巨大観測装置が造られつつあります。ここにできるのは「ハイパーカミオカンデ」です。
今年6月、この建設現場が報道陣に公開されました。報道陣を乗せたマイクロバスは、山道をのぼります。山腹にトンネルの入り口がみえてきました。トンネルをしばらく進むと、ひんやりとした「地底」に着きました。バスを降り歩くと、目の前に巨大な円筒型の空洞が開けました。観測施設の底の部分です。おとなの背丈ほどの大きな緑のコーンが立っています。円筒部の中心です。
掘削された空洞は直径69メートル、高さ94メートル。サッカーコートを縦にしたような広がり。岩肌には削った荒々しい痕。並んでいる掘削用の重機が小さく見えます。
円筒部の上部にも案内されました。上から見ると空洞の巨大さ、深さがより実感できます。底部で小さく見えた重機が豆粒のように見えます。
2021年5月からトンネル工事を始め、22年11月から本体の空洞施設の掘削を開始。報道公開から約1カ月後の今年7月末、空洞の掘削が完了しました。
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