インタビューにこたえる金石範さん(2012年、佐藤光信撮影)
戦後の米軍占領下の済州(チェジュ)島での虐殺事件を生涯のテーマとする、作家の金石範(キム・ソクポム)さんが今年10月、100歳を迎えました。11月、それを記念するシンポジウムを開催した大阪公立大学の宋恵媛(ソン・ヘウォン)教授に、金石範の文学について聞きました。
松田繁郎記者
金石範が生まれた1925年は、治安維持法が制定された年です。日本の帝国主義が拡大していくなかで大阪・猪飼野(いかいの)で幼少期を送り、朝鮮人が徴兵の対象とされたころに成年に達しました。日本の敗戦とともに朝鮮は解放を迎え、金石範はぎりぎりで戦地に送られるのを免れました。
ところが、朝鮮半島がアメリカとソ連によって分割占領されるなかで、ソウルで知り合った友人たちは命を落とし、故郷・済州島では米軍と地元の軍・警察などによる住民虐殺(四・三事件=注)が起きました。南北分断の傷口は今もなおぱっくりと開いたままです。金石範はこの1世紀にわたる暴力と痛みの歴史を、フィクションの力で描きつづけてきました。
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